暖房器具の電気代はどれが安い?消費電力の数字だけでは比べられない理由

暖房器具の電気代はどれが安い?消費電力の数字だけでは比べられない理由 家電

暖房器具を選ぶとき、多くの人が消費電力の数字を見比べます。

エアコンは600W、オイルヒーターは1,200W、こたつは500W。この数字だけを見ると、こたつがいちばん安くてオイルヒーターが高いように思えます。

ところが実際の電気代は、その順番になりません。暖房器具は、消費電力の数字だけでは比べられないからです。

理由は2つあります。エアコンだけ仕組みが違うことと、暖める範囲がまったく違うことです。

この記事では、なぜ単純比較ができないのかを説明したうえで、実際にどう選べば安くなるのかを整理します。

先に結論:エアコンを主役にして、足りない分を足す

結論から書きます。

  • 部屋全体を同じ温度にするなら、エアコンがいちばん安い
  • 足元や体だけなら、こたつ・電気毛布・ホットカーペットが圧倒的に安い
  • 電気ストーブとオイルヒーターは、電気代が高くなりやすい
  • いちばん安く済むのは、エアコンを弱めに回して、こたつや電気毛布で補う組み合わせ

なぜこうなるのかを、順番に説明します。

エアコンだけ、仕組みがまったく違う

ここが最初のポイントです。

電気ストーブもオイルヒーターもこたつも、やっていることは同じです。電気を熱に変えているだけです。

ところがエアコンは違います。電気で熱を「作って」いるのではなく、外の熱を「運んで」きています。

外の空気にも熱はある

冬の外気は冷たく感じますが、それでも熱を持っています。エアコンはその熱を集めて、部屋の中へ移動させます。この仕組みをヒートポンプと呼びます。

ポンプで水をくみ上げるように、熱をくみ上げるイメージです。水を作っているのではなく、運んでいる。だから少ない電気で多くの熱を動かせます。

だから消費電力より多くの熱が出せる

この効率を表す数字がCOP(成績係数)です。消費した電気に対して、何倍の熱を得られるかを示します。

家庭用エアコンの暖房では、多くの機種がCOP 3.5以上、条件がよければ6以上になるものもあります。COP 4なら、600Wの電気で2,400W相当の熱を出している計算です。

器具 仕組み 電気1に対して出る熱
エアコン 外の熱を運ぶ 3.5〜6
電気ストーブ 電気を熱に変える 1
オイルヒーター 電気を熱に変える 1
こたつ・電気毛布 電気を熱に変える 1

電気を熱に変える器具は、どれも効率が同じ「1」です。メーカーや価格で差はつきません。1,200Wの電気を使えば、1,200W分の熱が出る。それ以上でも以下でもありません。

「このオイルヒーターは省エネです」という説明を見ることがありますが、熱を作る効率そのものは変えられません。変えられるのは、温度を細かく制御して無駄な運転を減らすところまでです。

ただし、寒い日ほどエアコンの効率は落ちる

ここは正直に書いておきます。エアコンの効率は、外の気温によって変わります。

外の熱を集めてくる仕組みなので、外気温が下がるほど集められる熱が減ります。秋口の10℃くらいの日と、真冬の氷点下の日では、同じ設定でも効率が違います。

さらに、外気温が低いと室外機に霜が付きます。これを溶かすために霜取り運転が入り、そのあいだは暖房が止まります。

そのため、寒冷地では「エアコンがいちばん安い」が成り立たないことがあります。氷点下が続く地域では、石油ファンヒーターのほうが暖まりやすく、費用も抑えられる場合があります。

寒冷地向けに設計されたエアコンもあります。お住まいの地域の冬の最低気温が氷点下になるなら、その前提で選ばれた機種かどうかを確認してください。

暖める範囲が違うものを、同じ土俵で比べない

2つ目のポイントです。

こたつは1時間1〜2円程度で使えます(機種と設定で変わります)。エアコンは1時間20円前後。数字だけ見れば、こたつが10倍以上安いことになります。

でも、この2つは比べられません。こたつは足元しか暖めず、エアコンは部屋全体を暖めているからです。

暖める範囲 器具
部屋全体 エアコン、石油ファンヒーター、ガスファンヒーター、オイルヒーター
自分のまわりだけ こたつ、電気毛布、ホットカーペット、電気ストーブ

この2つのグループは、そもそも用途が違います。「こたつのほうが安いからエアコンをやめる」という判断は、部屋の寒さが解決しないまま光熱費だけ下がる、ということです。

定格と実際の消費電力も違う

もうひとつ、数字を見るときの注意点があります。

こたつの定格消費電力は500〜600W程度ですが、実際の電気代は1時間1〜2円程度です。矛盾しているように見えますが、理由があります。

こたつは温度を保つために、ヒーターがついたり消えたりを繰り返しています。500Wを出しっぱなしにしているわけではなく、平均すればずっと小さい電力で動いています。

ホットカーペットや電気毛布も同じです。カタログの消費電力は「最大値」であって、1時間ずっとその電力を使うわけではありません。

1時間あたりの電気代の目安

計算のしかたは覚えておくと役に立つ

電気代は、次の式で出せます。

電気代の計算式
消費電力(kW)×使う時間(h)×電力量料金(円/kWh)

たとえば1,200Wのオイルヒーターを1時間、1kWhあたり31円(家電公取協の目安単価)で使った場合は、1.2 × 1 × 31 = 約37円です。

ワット(W)をキロワット(kW)に直すには1,000で割ります。この式さえ覚えておけば、どの家電でも自分で計算できます。

ここまでを踏まえて、実際の電気代の目安を並べます。1kWhあたり31円で計算した概算です。

器具 消費電力の目安 1時間の電気代 暖める範囲
エアコン 600〜900W 約19〜28円 部屋全体
オイルヒーター(強) 1,200W前後 約37円 部屋全体(ゆっくり)
オイルヒーター(弱) 300〜500W 約9〜16円 部屋全体(ゆっくり)
電気ストーブ 800〜1,200W 約25〜37円 まわりだけ
こたつ 断続運転で平均は小さい 約1〜2円 足元だけ
電気毛布 断続運転で平均は小さい 約1円前後 体だけ
石油ファンヒーター 運転中は小さい 電気代は小さい
(灯油代が別)
部屋全体

※電力量料金は契約プランで変わります。ご自身の明細で確認してください。また消費電力は機種と設定温度で大きく変わりますので、上の数字はあくまで目安として見てください。正確に知りたい場合は、手元の機種の取扱説明書やカタログの消費電力を上の式に当てはめてください。

部屋全体を暖めるグループのなかでは、エアコンがいちばん安くなります。ヒートポンプの効率が効いているからです(ただし前述のとおり、寒冷地では事情が変わります)。

なお、同じ「ヒーターを使うかどうかで電気代が変わる」構造は、除湿機にも当てはまります。除湿機の電気代は方式で変わる?でも、ヒーターを使うデシカント式が電気を食うと書きました。暖房も除湿も加湿も、ヒーターが入ると電気代が上がります。

石油とガスは、燃料代が別にかかる

石油ファンヒーターとガスファンヒーターは、電気代だけを見ると安く見えます。ファンと制御にしか電気を使っていないからです。

ただし当然ながら、灯油代やガス代がかかります。この燃料代のほうが本体のコストです。

灯油価格は年によって大きく変わるので、「石油ファンヒーターは安い」と固定的に考えないほうがいいと言えます。冬のはじめに灯油価格を確認してから、その年の暖房計画を立てるくらいがちょうどいい距離感です。

石油ファンヒーターには別の手間がある

費用以外の面も見ておきます。

  • 灯油を買いに行く手間。ポリタンクの運搬も含めて
  • 給油の手間とにおい
  • 換気が必要。燃焼で水蒸気と二酸化炭素が出ます
  • シーズン終わりに灯油を使い切るか抜く作業

とくに換気は見落とされがちです。燃焼系の暖房は、定期的に窓を開ける必要があります。そのたびに部屋が冷えるので、実際の効率は数字ほど良くありません。

また、燃焼時に水蒸気が出るため、部屋干しをしている場合は洗濯物が乾きにくくなります。暖房と加湿を同時にしている状態になるからです。

いちばん安いのは、組み合わせて使うこと

ここまでの話をまとめると、答えが見えてきます。

部屋全体はエアコンで、体のまわりはこたつや電気毛布で。この組み合わせが、いちばん光熱費を抑えられます。

なぜ組み合わせが効くのか

暖房費は設定温度を上げるほど跳ね上がります。部屋を22℃にするのと25℃にするのでは、消費するエネルギーがまったく違います。

ところが人が寒いと感じるのは、多くの場合足元や体の表面です。そこだけを直接暖めれば、部屋の設定温度が低くても寒く感じません。

エアコンを20℃前後に設定して、こたつや電気毛布で足元を補う。こたつは1時間1〜2円なので、エアコンの設定温度を2℃下げられれば、元が取れる計算になります。

サーキュレーターを足すとさらに効く

暖かい空気は天井にたまります。床付近が寒いままだと、設定温度を上げたくなります。

サーキュレーターで空気を循環させると、天井にたまった暖気が下りてきて、部屋の温度が均一になります。設定温度を下げても寒く感じにくくなるので、暖房費が下がります。

サーキュレーター自体の電気代は、DCモーターなら1日つけっぱなしでも十数円が目安です。使い方によっては暖房費の削減分が上回ります。

選び方はサーキュレーターの選び方とおすすめにまとめています。冬は上向きに回して、天井の暖気を下ろす使い方になります。

部屋と使い方で選ぶ

あなたの状況 向いている組み合わせ
リビングで長時間過ごす エアコン+こたつ、またはエアコン+ホットカーペット
寝室で朝までつけたい 電気毛布が中心。エアコンは弱めかタイマー
エアコンが付けられない部屋 オイルヒーターか石油ファンヒーター。ただし電気代か灯油代はかかる
冬に氷点下が続く地域 寒冷地向けエアコン、または石油ファンヒーター。一般的なエアコンは効率が落ちます
脱衣所や洗面所など短時間だけ 電気ストーブ。すぐ暖まるので短時間なら向く
小さな子どもや高齢者がいる 表面が熱くならないエアコン中心。燃焼系は換気と火傷に注意
部屋干しもしている エアコン暖房。燃焼系は水蒸気が出て乾きにくくなる

暖房を買い足す前に確かめたいこと

電気代を見て「もっと安い暖房に買い替えよう」と考える前に、いま使っているものの使い方で解決することがあります。

買い足したほうがいい人

  • エアコンをつけても足元が寒い。暖かい空気は上にたまるので、足元専用の暖房を足すのが効きます
  • 寒くて朝起きられない。タイマーで起床前に暖まる器具があると、布団から出るハードルが下がります
  • 脱衣所や洗面所が極端に寒い。ここは温度差が体に負担をかける場所です
  • エアコンのない部屋がある。個室や納戸で作業する時間が長いなら、その部屋用が要ります

買わなくていい人

  • エアコンの設定温度を上げずに我慢している。まず1〜2度上げてみてください。それで足りるなら買う必要はありません
  • 窓に対策をしていない。熱が逃げる最大の場所は窓です。カーテンを長くする、隙間を埋めるほうが先に効きます
  • すでにこたつか電気毛布がある。この2つは1時間1〜2円で、費用対効果ではこれ以上のものがありません

1シーズンで見たときの差

1時間あたり10円の違いは小さく見えます。ただし1日8時間、12月から3月までの4か月で計算すると、約9,600円になります。

冬の朝、エアコンをつけて部屋が暖まるのを待つあいだ、手足が冷えたままでいる時間。あの数分を短くするために何を足すか。そう考えると、選ぶ器具が変わってきます。

速さが欲しいなら石油ファンヒーター、静かさなら電気式、費用を抑えたいなら足元だけを暖めるもの。全部を1台でまかなおうとしないほうが、結果的に安く済みます。

実際の機種で比べる

よくある質問

オイルヒーターは電気代が高いと聞きますが本当ですか

部屋全体を暖める用途では高くなりやすいです。電気を熱に変えるだけなので、エアコンのような効率の良さがありません。ただし空気を汚さず音も静かなので、寝室や子ども部屋で「多少高くても静かに暖めたい」という選び方はあります。

エアコンはつけっぱなしと、こまめに消すのどちらが安いですか

短時間の外出ならつけっぱなしのほうが安くなることが多いです。エアコンは設定温度まで上げるときに最も電力を使うので、冷えきった部屋を暖め直すほうが電気を使います。数時間の外出なら消したほうがよくなります。

電気ストーブは電気代が安いですか

安くありません。800〜1,200Wを使うので、1時間あたりではエアコンより高くなることもあります。すぐ暖かくなるのが利点なので、脱衣所など短時間だけ使う場所に向いています。

こたつだけで冬を越せますか

部屋の温度は上がらないので、上半身は寒いままです。部屋が極端に冷える地域では、健康面のリスクもあります。エアコンを弱めに併用するほうが、結果的に安く快適になります。

暖房費をいちばん減らす方法は何ですか

設定温度を下げることです。そのために体のまわりを直接暖める器具を足すのが効きます。加えて、カーテンを厚手にする、窓に断熱シートを貼るなど、熱を逃がさない工夫も同じくらい効果があります。

まとめ:数字を比べる前に、範囲を揃える

暖房器具の電気代を比べるときは、次の順番で考えてください。

  1. 暖める範囲を揃える。部屋全体の器具と、まわりだけの器具は比べられません
  2. エアコンだけ仕組みが違うと知る。外の熱を運ぶので、消費電力の3.5〜6倍の熱を出せます。ただし外が冷えるほど効率は落ちるので、寒冷地では前提が変わります
  3. 電気を熱に変える器具は、どれも効率が同じ。オイルヒーターも電気ストーブもこたつも変わりません
  4. 組み合わせる。エアコンで部屋を、こたつや電気毛布で体を。設定温度を下げられるぶんが節約になります

暖房器具のカタログには消費電力が書かれていますが、その数字は「どれだけ電気を使うか」であって、「どれだけ暖かくなるか」ではありません。

同じ1,000Wでも、エアコンなら数千W分の熱になり、電気ストーブなら1,000W分の熱にしかならない。この違いを知っているかどうかで、冬の光熱費は変わります。

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