引越しが決まって、エアコンの前で少し考え込む瞬間があります。まだ動いているし、捨てるのはもったいない。でも外して運んで付け直すと、いくらかかるのか分からない。
結論から言うと、「使った年数」「部屋の広さ」「移設の見積もり」の3つで、かなり絞れます。感覚で決めるより、数字を並べたほうが早く決まります。
先に結論:使った年数と部屋の広さで、答えが変わります
移設(取り外して新居に付け直すこと)の費用は2万円から3万円が目安です。この金額を、買い替えたときに減る電気代と比べると、どちらが得かが見えてきます。
| 使った年数 | 6畳くらいの部屋 | 14畳くらいのリビング |
|---|---|---|
| 5年以内 | 持っていく | 持っていく |
| 6年から9年 | 持っていく | どちらもあり。見積もり次第 |
| 10年以上 | どちらもあり | 買い替えを検討 |
ここには理由があります。広い部屋のエアコンほど、新しくしたときに減る電気代が大きいからです。6畳用と14畳用では、その差が4倍以上あります。次の見出しから、順番に見ていきます。
この記事で使った資料
電気代の数字は資源エネルギー庁が公表している試算、エアコンの寿命に関する数字はメーカーの公表値と内閣府の調査を使っています。工事費用は複数の業者が公開している料金の範囲をまとめたもので、実際の金額は住まいの条件で変わります。
移設には2万円から3万円かかります
移設は、外す・運ぶ・付けるの3つの作業に分かれます。それぞれに料金があり、合計が2万円から3万円あたりに収まることが多いです。
| 作業 | 目安 | 中身 |
|---|---|---|
| 取り外し | 5,000円から10,000円 | ガスを室外機に戻してから外す作業を含みます |
| 取り付け | 8,000円から16,000円 | 配管4m以内までを含むことが多いです |
| 運搬 | 引越し料金に含む場合あり | 別料金の業者もあるので確認が要ります |
| 合計 | 20,000円から30,000円 | 条件が良ければこの範囲です |
ここから追加になることがあります
見積もりが2万円台でも、当日に増えることがあります。増える理由はほぼ決まっているので、先に自分の家を見ておくと防げます。
- 配管が足りない。基本は4mまでで、それを超えると1mあたり3,000円から4,500円ほど足されます
- コンセントの形が違う。100Vと200Vで差し込み口が違い、合わないと電気工事が要ります
- 室外機を地面に置けない。壁に付ける、屋根に載せる、二段に重ねるといった置き方は金具代と作業代がかかります
- 壁に穴がない。新しく開ける場合、コンクリートだと料金が上がります
- 配管が壁の中を通っている。隠蔽配管と呼ばれる作り方で、外すのも付けるのも手間がかかります
- ガスが減っている。補充すると5,000円から20,000円ほどかかります
これらが重なると、移設費が5万円近くになることもあります。そうなると、次に説明する買い替えとの差がほとんどなくなります。
買い替えと比べるときは、本体代まで入れて計算します
ここでよくある勘違いがあります。「新しいエアコンは電気代が安いから、買い替えたほうが得」という話です。半分正しくて、半分足りません。
比べるのは、移設費2万円から3万円と、買い替えの総額です。本体と工事で10万円から15万円ほどかかるとすると、差は7万円から13万円です。この差を電気代で埋められるかどうか、が本当の問題です。
上位モデルを選んだり、追加工事が重なったりすると、買い替え側はここから上振れします。以下の計算は「買い替え総額が10万円から15万円に収まった場合」の話として読んでください。
新しくすると、電気代はどれくらい減るのか
資源エネルギー庁が、2027年4月から始まる新しい省エネ基準について試算を出しています。今の基準(2010年度基準)の製品と比べた場合の数字です。
| 部屋の広さ | 1年で減る電気代 | 14年使った場合 |
|---|---|---|
| 6畳用(2.2kW) | 約2,760円 | 約4万円 |
| 14畳用(4.0kW) | 約12,600円 | 約18万円 |
電気代を1kWhあたり31.75円として計算した数字です。この単価は2023年4月から2025年12月までの実績をもとにした、試算用の単価です。
6畳用と14畳用で、減る額が4倍以上違います。広い部屋のエアコンほど電気を使うので、性能が上がったときの効果も大きくなります。
ただしこれは決まった条件での試算です。今使っている機種の性能、1日に何時間つけるか、住まいの断熱、契約している電気料金によって、実際の差は変わります。目安として読んでください。
差額を何年で取り戻せるか
買い替えの差額を7万円から13万円として、上の削減額で割ってみます。
| 部屋 | 取り戻すまで | どう考えるか |
|---|---|---|
| 6畳用 | 25年から47年 | 使う年数を超えます。動くなら持っていく |
| 14畳用 | 6年から10年 | 長く住むなら追いつきます。年数次第 |
つまり、小さい部屋のエアコンは、電気代を理由にした買い替えが成り立ちにくいということです。平均して14年使うとしても、回収まで届きません。逆にリビング用は、これから10年以上住む家なら計算が合ってきます。
ここで注意したいのは、買い替え側が高くつくと、この年数は伸びることです。14畳用で上位モデルを選んで総額20万円近くになると、回収は10年を超えます。移設と買い替えを比べるときは、実際に買う機種の値段で計算し直してください。
ただしこれは電気代だけの話です。10年近く使ったエアコンには、次に説明する別の事情があります。
何年使ったかを、まず確かめます
年数が分からないまま判断するのは危ないので、確認してから決めます。
製造年は本体に書いてあります
室内機の右側か下側に、白いシールが貼ってあります。銘板と呼ばれるもので、ここに製造年が入っています。室外機の側面にも同じものがあります。
このシールで、あわせて次の3つも見ておくと、新居で付けられるかの判断が早くなります。
- 製造年。ここが起点になります
- 電源。100Vか200Vか。新居のコンセントと合うかを見ます
- 冷房能力。2.2kWなら6畳用、4.0kWなら14畳用が目安です
「10年」と「14年」は別の数字です
エアコンの寿命として、10年と14年という2つの数字をよく見かけます。これは意味が違うので、分けて考えます。
| 数字 | 何を指すか | 出どころ |
|---|---|---|
| 10年 | 設計上の標準使用期間。メーカーが安全に使える前提として示す年数 | メーカーの公表値 |
| 14年 | 実際に使われている平均年数。壊れるまでの年数ではありません | 内閣府の消費動向調査 |
移設の判断で効いてくるのは、もうひとつ別の年数です。修理に使う部品をメーカーが持っている期間は、その機種の製造が終わってから10年とされています。これを過ぎると、部品が手に入らず修理を断られることがあります。
つまり、10年以上使ったエアコンは、移設した先で壊れたときに直せない可能性があるということです。2万円から3万円かけて運んで、翌年に故障して部品がない、という結果もありえます。年数が判断に効くのは、電気代よりむしろこちらの理由です。
新居に付けられるかを、先に確認します
持っていくと決めても、新居の条件が合わないと当日に困ります。内見のときか、鍵を受け取った日に見ておく項目です。
- コンセントの形。今のエアコンが200Vなら、新居のコンセントも200V用でないと工事が要ります
- 室外機を置く場所。ベランダの広さ、地面に置けるか、上の階なら壁付けになるか
- 配管を通す穴。すでに開いているか、開けてよい壁か
- 部屋の広さ。6畳用を14畳の部屋に付けると、冷えるまで時間がかかり電気代も増えます
- 賃貸なら管理会社の許可。穴を開ける工事は事前確認が要ります
部屋の広さと能力が合っていないときは、持っていく意味が薄くなります。今より広い部屋に引っ越すなら、そこだけは買い替えを検討する理由になります。
工事の日に、電気が通っているかを確認します
見落としやすいのがここです。取り外しのポンプダウンにも、取り付け後の試運転にも、電気が要ります。
- 今の家:電気の停止日を、エアコンを外す日より後にします。先に止めると作業ができません
- 新居:取り付け日までに電気を使える状態にしておきます。申し込みが間に合わないと、付けたけれど動作確認ができない状態になります
引越しの手続きは電気だけではないので、まとめて確認しておくと抜けません。引越しの電気・ガス・ネットはいつ申し込むかに、それぞれの締め切りをまとめています。
賃貸で最初から付いていたエアコンは、持っていけません
ここは間違えると退去時にもめるので、整理しておきます。
| どんなエアコンか | 引越しのときどうするか |
|---|---|
| 入居したときから付いていた | 自分のものではありません。そのまま残します |
| 自分で買って付けた | 外して持っていくのが基本です |
| 自分で付けたが、置いていきたい | 大家さんか管理会社の許可が要ります |
「設備」と「残置物」は違います
入居したときから付いていたエアコンには、2つの種類があります。どちらかによって、壊れたときに誰が直すかが変わります。
| 呼び方 | どういうものか | 壊れたら |
|---|---|---|
| 設備 | 大家さんが部屋の設備として用意したもの | 大家さん側に相談します |
| 残置物 | 前の入居者が置いていったものを、そのままにしてある | 自分で直すか、自費で買うことになる場合があります |
見た目は同じでも扱いが違うので、契約書か重要事項説明書で、エアコンが設備として書かれているかを確認します。書かれていなければ残置物の可能性があります。どちらにしても自分のものではないので、持ち出さずに残します。
置いていく場合、次の入居者が使うことになります。壊れたときの修理を誰がするかという話になるので、勝手に残すと撤去費用を請求されることがあります。連絡しておけば済む話なので、退去が決まった時点で聞いておきます。そのときのやり取りは、口頭ではなくメールなど記録の残る形にしておくと、後で困りません。
新居で工事ができないときの選び方
持っていく前提で進めていたのに、穴が開けられない、室外機を置く場所がない、という部屋もあります。この場合は工事のいらない冷房が選択肢になります。
窓に取り付けるタイプと、床に置いて排気ダクトを窓から出すタイプがあります。どちらも壁に穴を開けず、室外機もありません。
スポットクーラーと窓用エアコンの比較で、冷え方・音・置き場所の違いをまとめています。工事ができない部屋で何を選ぶかは、ここで判断できます。
1年だけ住む予定なら、借りるという方法もあります。窓用エアコンを買う場合と借りる場合の比較に、期間ごとの損得を出しています。
持っていくほうがいい人、買い替えを考える人
ここまでの内容を、自分に当てはめる形に並べ直します。
持っていくほうがいい人
- 買ってから5年以内。部屋の広さに関係なく、まだ十分に使えます
- 寝室や子ども部屋で使う小さめの機種。新しくしても電気代の差が年3,000円ほどなので、2万円の移設費のほうが安く済みます
- 新居の条件が今と似ている。同じくらいの広さで、コンセントの形も合っている場合です
- 引越し先で長く住むか決めていない。数年で動く可能性があるなら、大きな出費は先送りするほうが身軽です
買い替えを考えたほうがいい人
- 10年以上使っている。運んだ先で壊れたとき、部品がなくて直せないことがあります
- リビング用で、新居に10年以上住む予定。年12,600円の差が積み上がって、7年から10年で追いつきます
- 今より広い部屋に移る。6畳用を14畳の部屋で使うと、冷えにくいうえに電気代も増えます
- 見積もりで4万円を超えた。配管の延長や室外機の特殊な設置が重なった場合です。買い替えとの差が小さくなります
迷ったときは、移設の見積もりを先に取ります。2万円台で収まるなら持っていく、4万円を超えたら買い替えと並べて考える。金額が出てから決めるほうが、早く決まります。
工事はどこに頼むと安いか
頼み先は3つあります。それぞれ得意なところが違います。
| 頼み先 | 向いている場合 | 注意 |
|---|---|---|
| 引越し業者に一緒に頼む | 手間をかけたくない | 工事は提携先が行うことが多いので、どこが施工するかを先に聞きます |
| エアコン専門の工事業者 | 追加工事がありそう | 引越し日と工事日を自分で合わせます |
| 量販店(買い替える場合) | 同時に古い機種を処分したい | 繁忙期は工事の予約が取りにくくなります |
見積もりで聞いておく6つ
総額だけ聞くと、当日の追加で崩れます。分けて聞くと、他社と比べられるようになります。
- 取り外しと取り付けの料金は、それぞれいくらか
- 配管は何mまで込みか。足りない場合は1mいくらか
- ガスの補充が要る場合、いくらか
- 室外機の置き方で追加が出るのはどんな場合か
- 工事は自社か、提携先か。不具合が出たときの連絡先はどちらか
- 工事後の保証はどこまでか。ガス漏れや水漏れが出た場合の対応と、古い機種で保証の対象外になる条件
最後の1つは、10年近く使ったエアコンを運ぶ場合はとくに確認しておきます。年数が経った機種は、移設後の不具合を保証の対象外にしている業者があります。断られてから知るより、頼む前に聞いておくほうが選び直せます。
3月と4月は引越しと工事が重なって、予約が取りにくくなります。日程が決まったら、部屋探しと同じくらい早く動くほうが選べます。
よくある質問
取り外しは自分でできますか
おすすめしません。取り外す前に、配管の中の冷媒ガスを室外機に閉じ込める作業(ポンプダウン)が必要です。これを飛ばして配管を外すと、冷媒がそのまま大気中に出ます。環境への影響があるうえに、次に付けるときガスの補充代がかかるので、結果として高くつきます。
なお、使わなくなったエアコンを捨てる場合は、家電リサイクル法にそって引き取られ、そこで冷媒も回収・処理されます。自分で外して粗大ごみに出す、という処分はできません。
引越しの当日に外してもらえますか
できる業者もありますが、前日までに外しておく形が一般的です。取り外しから取り付けまで数日空くこともあるので、その間の暑さ寒さは見込んでおきます。
10年使ったエアコンは移設できませんか
作業自体はできます。ただし業者によっては、古い機種の移設で不具合が出ても保証しないと決めているところがあります。年数を伝えたうえで、保証の範囲を確認してから頼みます。
古いエアコンを処分するといくらかかりますか
家電リサイクル法の対象なので、リサイクル料金と運搬の費用がかかります。買い替えなら、購入した店に引き取ってもらうのが手間の少ない方法です。
新居にもともとエアコンが付いていました
その部屋は工事の必要がありません。持ってきたエアコンは別の部屋に付けるか、処分するかを選ぶことになります。2台分の工事費をかける前に、その部屋で本当に使うかを考えます。
まとめ:数字が出れば、迷う時間は短くなります
判断の順番をもう一度並べます。
- 製造年を見る。銘板で確認します。10年を超えていたら、部品の在庫という別の問題が出てきます
- 部屋の広さで分ける。6畳用は電気代で買い替え費を取り戻せません。14畳用は7年から10年で計算が合います
- 新居の条件を先に見る。コンセント、室外機の場所、穴。ここが合わないと当日に追加が出ます
- 賃貸の備え付けは残す。自分で付けたものを置いていくなら、先に連絡します
移設は2万円から3万円。この金額をかける価値があるかは、エアコンの年数と部屋の広さで決まります。まだ5年なら持っていく、10年を超えたリビング用なら買い替えを見る。この2つを覚えておけば、見積もりを見たときに判断できます。
工事ができない部屋になった場合は、窓用エアコンの選び方から、置ける形の冷房を探せます。
