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蛇口から出した水を、そのままコップで飲めますか。
私は長いあいだ、それができませんでした。カルキのにおいが気になる地域に住んでいて、水道水をそのまま口にする気になれなかったからです。
やっていたのは、氷をたくさん入れてキンキンに冷やすこと。それでようやく「まあ飲める」という状態でした。常温では無理で、料理に使うときも少し気が引ける。そんな感覚がずっとありました。
この記事では、そこから抜け出すために試せる方法を、お金がかからない順に並べます。煮沸や汲み置きといった昔からある方法から、浄水器やウォーターサーバーまでです。
先に言っておくと、多くの人はお金をかけない方法で足ります。ただし、それぞれに限界もあります。その限界がどこにあるのかを知っておくと、自分に必要なものが見えてきます。
そもそも、あのにおいの正体は何なのか
水道水のにおいは、よく「カルキ臭」と呼ばれます。塩素のにおいだと思われがちですが、正確には少し違います。
水道局の説明によると、水道水に含まれるアンモニア性窒素と、消毒用の塩素が反応してできる「クロラミン」という物質がにおいの原因です。塩素そのものというより、塩素が何かと反応した結果できたものが、あの独特のにおいを出しています。
においがあるのは、安全のためでもある
ここは押さえておきたい点です。
塩素は水の中の雑菌を殺す働きをしています。水道水が蛇口まで安全な状態で届くのは、この残留塩素があるからです。においが気になるからといって塩素を完全に抜いてしまうと、今度は水が傷みやすくなります。
つまり、においを消すということは、水を守っている成分を減らすということでもあります。においが取れるかわりに、その水は傷みやすくなります。
この関係を知っておくと、次に紹介する方法の「限界」が理解しやすくなります。
お金をかけずにできる4つの方法
まずは費用ゼロ、あるいはそれに近い方法から見ていきます。
1. 冷やす。いちばん手軽で、効果もある
実は私が長年やっていたのがこれです。そして水道局も案内している方法でした。
水を冷やすと、においを感じにくくなります。東京都水道局の説明では、コップに氷を3〜4個入れるだけで十分とされています。冷蔵庫で冷やしておくのでも構いません。
においの成分がなくなるわけではありませんが、低温だと揮発しにくくなるため、鼻に届く量が減ります。手間もお金もかからないので、まず試すならこれです。
ただし限界もあります。冷やしている間は良くても、常温に戻ればにおいは戻ります。料理に使う水や、白湯として飲みたいときには使えません。私が「常温は無理」だったのは、まさにこの限界にぶつかっていたからです。
2. 汲み置き。時間はかかるが確実
水を容器に入れてしばらく置いておくと、塩素が抜けてにおいが和らぎます。日光に当てるとより早く抜けます。
費用はゼロですが、時間がかかるのが難点です。そして前述のとおり、塩素が抜けた水は雑菌に対して無防備になります。水道局も「早めに使ってください」と案内しています。
つまり、作り置きには向きません。飲む分をその都度用意することになります。
3. 煮沸。確実だが手間と時間がかかる
水を沸騰させると残留塩素が減り、においが軽くなります。
効果は確実ですが、沸かす手間と、冷ます時間がかかります。夏に冷たい水を飲みたいのに、いったん沸かしてから冷ますというのは、正直なところ現実的ではありません。
そして汲み置きと同じく、塩素が抜けているので日持ちしません。冷蔵庫に入れても早めに飲み切る必要があります。
4. レモン汁を加える。用途は限られる
ビタミンCには塩素を分解する性質があるため、レモン果汁を少し加えるとにおいが和らぎます。
すぐにできる方法ですが、当然ながら水にレモンの味がつきます。そのまま飲む水としては使えても、料理やお茶には向きません。用途が限られます。
無料の方法に共通する、ひとつの限界
4つの方法を並べてみると、共通点が見えてきます。
| 方法 | 費用 | 限界 |
|---|---|---|
| 冷やす | ほぼゼロ | 常温に戻るとにおいも戻る。料理には使えない |
| 汲み置き | ゼロ | 時間がかかる。日持ちしない |
| 煮沸 | ガス代・電気代 | 沸かす手間と冷ます時間。日持ちしない |
| レモン汁 | レモン代 | 味がつく。用途が限られる |
共通しているのは、飲みたいたびに何かをする必要があることです。
塩素を抜いた水は保存がきかないので、まとめて作っておくことができません。冷やす方法にしても、常温で飲みたいときには使えません。
手間があると、人は飲まなくなる
ここからは私の話です。この「毎回の手間」が、思っていたのと違う形で効いてきました。
私の場合、手間が理由で水を飲む量が減りました。
うちの冷蔵庫は、給水タンクに水を入れておくと自動で氷ができるタイプです。ところがそのタンクの補充を忘れる。気づくのは、飲みたいと思って製氷室を開けた瞬間です。そこから水を足しても、氷ができるまでには時間がかかります。
かといって常温の水道水は飲む気になれない。結果どうなったかというと、コンビニでお茶やジュースを買っていました。
水を飲みたかったはずなのに、水を飲まない。そのかわりに、わざわざお金を出して別の飲み物を買っている。振り返ると、そういう状態が長く続いていました。
無料の方法の本当の限界は、費用でも手間でもなく「続かないこと」だったと思います。ひと手間あるだけで、人は簡単にあきらめます。
もちろん、この手間を苦にしない人もいます。飲む回数が少ない人や、氷を切らさず用意できる人なら、無料の方法で十分です。1日にコップ2〜3杯なら、氷を入れるだけで解決します。わざわざお金をかける必要はありません。
お金をかける選択肢は、大きく3つ
ここからは費用がかかる方法です。安い順に3つあります。
選択肢1: ポット型浄水器
冷蔵庫に入れて使う、注ぐタイプの浄水器です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 本体 数千円 |
| 維持費 | カートリッジ代。1日3L使う場合で月600円前後 |
| 向いている人 | できるだけ安く始めたい。飲む量は1日2L以下 |
| 弱点 | 継ぎ足すと全体がぬるくなる。冷蔵庫の棚を1段使う |
いちばん安く始められる方法です。数千円の本体を買えば、あとはカートリッジ代だけで済みます。合わなければやめるのも自由です。
私も長く使っていました。ただ、使い続けるうちに気になってきたのが「継ぎ足すとぬるくなる」問題です。冷えた水が減ったので水道水を足すと、全体の温度が上がります。次に飲みたいときに冷たくない、ということが繰り返し起きました。
選択肢2: 蛇口に直接つけるタイプ
キッチンの蛇口に取り付けて、レバーの切り替えで浄水を出すタイプです。
本体を取り付けてしまえば、蛇口をひねるだけで浄水が出ます。冷蔵庫の場所を取らず、料理にもすぐ使えるのが利点です。
一方で、出てくるのは常温の水です。冷たい水を飲みたければ、結局は冷やす手間が残ります。私が抱えていた「氷を用意するのが面倒」という問題は、この方式では解決しません。
また、蛇口の形状によっては取り付けられないことがあるので、購入前に確認が要ります。カートリッジの交換時期も自分で管理する必要があります。
費用は製品によって幅がありますが、本体とカートリッジの両方が必要になる点はポット型と同じです。
選択肢3: 浄水型ウォーターサーバー
水道水を本体のタンクに注ぐと、浄水して冷やしたり温めたりしてくれる機械です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 費用 | 月額制。電気代と水道代を含めて月3,000円台後半から |
| できること | 冷水と温水がいつでも出る。定額なので量を気にせず使える |
| 向いている人 | 1日2.4L以上使う。お湯も使いたい |
| 弱点 | 契約期間の縛りがある。置き場所が要る。動作音がする |
3つのなかで最も費用がかかります。そのかわり、冷たい水もお湯もいつでも出て、継ぎ足してもぬるくなりません。
私は最終的にこれを選びました。2か月使って、水道水に対する引っかかりはなくなりました。
いちばん変わったのは、水を飲む量が増えたことです。ボタンを押せば冷たい水が出て、減ったら水道水を足すだけ。氷ができるのを待つ必要も、切らして困ることもありません。飲むまでのハードルが消えたので、自然と飲むようになりました。コンビニで飲み物を買う回数も減りました。
ただ、誰にでも勧められるものではありません。契約期間が数年に及ぶものが多く、途中でやめると解約金がかかります。置き場所の条件もあります。飲む量が少ない人には、明らかに過剰です。
結局、どれを選べばいいのか
判断の軸は「1日にどれくらい飲むか」と「何に使うか」の2つです。
| あなたの状況 | 向いている方法 |
|---|---|
| 1日コップ数杯。冷たければいい | 氷を入れる(費用ゼロ) |
| 1日2L以下。安く済ませたい | ポット型浄水器 |
| 料理にも使いたい。冷蔵庫が狭い | 蛇口直結型 |
| 1日2.4L以上。お湯も欲しい | 浄水型ウォーターサーバー |
いきなり高いものを選ばなくていい
順番としては、下から試していくのが失敗しにくいと思います。
まず氷を入れてみる。それで足りるならそれでいい。物足りなければポット型を数千円で試す。ポット型で「ぬるくなるのが不満」「お湯も欲しい」と感じたら、そのときにサーバーを検討する。
私自身がこの順番でした。ポット型を使っていたからこそ、サーバーの何が良いのかがはっきり分かったところがあります。いきなり月3,000円台のサーバーを契約していたら、その価値に気づけなかったかもしれません。
それぞれの違いをもう少し詳しく知りたい方は、ポット型浄水器と浄水型ウォーターサーバーの比較にまとめています。費用の差や手間の違いを具体的に書きました。
Locca(ロッカ)浄水型ウォーターサーバー
水道水を注ぐだけの定額制。卓上型と床置き型から選べます
※料金・キャンペーン内容は時期により変わります。最新の条件は公式ページでご確認ください。
私が使っている機種を2か月試した感想は、Locca Slim-RⅡのレビューで詳しく書いています。動作音や使い始めに気になった点も、隠さずまとめました。
よくある質問
カルキ臭がする水は、体に悪いのですか
日本の水道水は水質基準を満たしたもので、そのまま飲めるよう管理されています。においがすること自体は、安全性の問題ではありません。むしろ塩素があるからこそ、蛇口まで衛生的に届いています。
気になるのは「味やにおいが好みでない」という点であって、健康被害の話とは分けて考えるのが正確です。
浄水器を使うと、ミネラルもなくなりますか
製品によります。一般的な家庭用の浄水器は、ミネラル分は残しながら塩素や不純物を除去する設計のものが多いです。ただし方式によって除去できる物質は違うので、気になる場合は各製品の性能表示を確認してください。
においが急に強くなった気がします
季節によって塩素の使用量が変わることがあります。また、水道管の工事後などに一時的に変化することもあります。いつもと明らかに違う、濁りがある、といった場合は、お住まいの水道局に相談するのが確実です。
浄水した水は日持ちしますか
しません。塩素が除去されているため、雑菌に対して無防備な状態になっています。浄水器を使った水も、汲み置きした水も、早めに飲み切るのが原則です。
浄水型ウォーターサーバーの場合は、機械側に殺菌の仕組みを持つものがあります。ただし給水タンクの水は「2日を目安に使い切る」といった案内があるので、機種ごとの説明書を確認してください。
ペットボトルの水を買うのと、どちらが安いですか
使う量によります。飲む量が少なければペットボトルのほうが安く、多くなるほど浄水器やサーバーが有利になります。2Lのペットボトルを100円とした場合、1日2.4Lあたりが浄水型サーバーとの分かれ目になります。
まとめ:まず氷を入れてみるところから
水道水のにおいが気になるとき、いきなり何かを買う必要はありません。
順番はこうです。
- 氷を入れて冷やす。水道局も案内している方法で、費用はかかりません
- それで足りなければポット型浄水器。数千円で始められます
- 「ぬるくなるのが不満」「お湯も欲しい」なら浄水型ウォーターサーバーを検討します
無料の方法には「毎回やる必要がある」「作り置きできない」という共通の限界があります。その手間のせいで水を飲まなくなってきたら、お金をかける判断のタイミングだと思います。
私の場合がそうでした。氷を切らすと飲めない。そのたびにコンビニで別の飲み物を買っていました。水を飲みたかったはずなのに、水にたどり着けていなかったわけです。
サーバーを入れてからは、飲むまでの手間がなくなったぶん、自然と水を飲むようになりました。変わったのは水の味だけでなく、水を飲む習慣そのものでした。
逆に、氷を用意する手間を苦にしない方や、もともと飲む量が少ない方なら、無料の方法で足ります。判断の目安は「1日にどれくらい飲むか」ではなく、「手間があると飲まなくなるかどうか」かもしれません。自分がどちらのタイプか、少し思い返してみてください。

