加湿器を選ぼうとすると、最初に「スチーム式」「気化式」「ハイブリッド式」「超音波式」という言葉が出てきます。
ここで多くの人がつまずきます。方式の違いが分かっても、それが自分の生活の何を変えるのかが見えないからです。
結論を先に言うと、方式で変わるのは主に2つです。電気代と、お手入れの手間。この2つのどちらを重く見るかで、選ぶべき方式が決まります。
この記事では、4つの方式が実際の暮らしで何を変えるのかを整理します。あわせて、カタログの「木造20畳・プレハブ33畳」という表記が何を意味しているかも説明します。ここを知らないと、部屋に合わない機種を選んでしまいます。
先に結論:電気代を取るか、手間を取るか
| 方式 | 電気代 | お手入れ | 加湿の速さ |
|---|---|---|---|
| スチーム式 | 高い | 比較的らく | 速い |
| 気化式 | いちばん安い | フィルターの手入れが要る | ゆっくり |
| ハイブリッド式 | 使い方で変わる | フィルターの手入れが要る | 速い |
| 超音波式 | 安い | こまめな手入れが必須 | 速い |
迷ったときの目安はこうです。
- 電気代を抑えたい → 気化式
- 早く加湿したい、寝室で使う → ハイブリッド式
- 手入れの回数を減らしたい → スチーム式
- 本体を安く済ませたい → 超音波式(ただし手入れは必須)
4つの方式は、水を空気に移す方法が違うだけ
難しく見えますが、やっていることはどれも同じです。水を空気中に移す。その方法が違うだけです。
スチーム式:水を沸かして蒸気にする
ヒーターで水を加熱し、沸騰させて蒸気を出します。やかんでお湯を沸かしているのと同じです。
加熱するので雑菌が繁殖しにくく、清潔を保ちやすいのが特長です。蒸気が温かいので、部屋の温度もわずかに上がります。
気化式:濡れたフィルターに風を当てる
水を含ませたフィルターに、ファンで風を送って気化させます。濡れたタオルを干して扇風機を当てているのと同じ仕組みです。
ヒーターを使わないので、電気を食うのはファンだけです。4方式のなかで電気代がいちばん安くなります。
ハイブリッド式:気化式にヒーターを足す
気化式の風を、ヒーターで温めた温風にします。温かい風のほうが水を多く運べるので、加湿の速さが上がります。
多くの機種は、温風を使うモードと使わないモードを切り替えられます。早く加湿したいときは温風、あとは送風だけ、という使い分けができます。
超音波式:水を細かい霧にする
超音波の振動で水を霧状にして飛ばします。加熱しないので消費電力は小さく、本体も小型にしやすい方式です。
ただし水をそのまま霧にして出すので、タンクの中で雑菌が繁殖していると、それも一緒に部屋へ出ていきます。ここが最大の注意点です。
電気代の差は、ヒーターを使うかどうかで決まる
方式による電気代の差は、突き詰めるとヒーターを使うかどうかの一点です。
水を蒸発させるにはエネルギーが要ります。それを電気ヒーターで与えるのがスチーム式とハイブリッド式、部屋の空気の熱を借りるのが気化式です。
同じ機種でも、モードで約29倍変わる
ハイブリッド式の実例を見ると分かりやすくなります。ダイニチのハイブリッド式加湿器 HD-LX1225 の公式仕様です。
| 運転モード | 消費電力(50Hz) | 加湿量 |
|---|---|---|
| 標準(温風あり) | 665W | 1,200mL/h |
| エコ(温風を抑える) | 23W | 600mL/h |
665Wと23Wで、約29倍の差があります。加湿量は半分になりますが、電気代は約30分の1になります。
1kWhあたり31円(家電公取協の目安単価)で計算すると、標準は1時間あたり約20円、エコは約0.7円。8時間つければ約160円と約6円の差になります。
つまりハイブリッド式は、使い方しだいで、電気代がスチーム式に近くも気化式に近くもなるということです。「ハイブリッド式は電気代が中くらい」という説明をよく見かけますが、実際にはどのモードで使うかで大きく変わります。
この構造は除湿機とまったく同じです。除湿機の電気代は方式で変わる?でも、ヒーターを使うデシカント式が電気を食うと書きました。加湿も除湿も、ヒーターを使う方式は電気代が上がります。
お手入れの手間は、方式で性質が変わる
電気代と並んで、方式で大きく変わるのがここです。手間の量というより、手間の種類が違います。
気化式・ハイブリッド式:フィルターの手入れ
水を含ませるフィルターがあるので、そこに水アカやカルキが付きます。放っておくと加湿量が落ち、においの原因にもなります。
メーカーはクエン酸での洗浄をすすめています。たとえばダイニチの取扱説明書では、抗菌気化フィルターの交換目安が5シーズンとされていますが、これには条件が付いています。
1シーズン6カ月、1日8時間運転、水道水の硬度50mg/L(全国平均)、月に1回クエン酸洗浄した場合
月1回の洗浄が前提の数字です。やらなければ寿命は縮み、1シーズンに満たなくても交換が必要になる場合があると明記されています。
スチーム式:カルキ汚れの掃除
水を沸騰させるので、加熱部に水道水のカルキ(ミネラル分)が固まって残ります。白い塊のようなものが付くので、定期的に落とす必要があります。
ただしフィルターがない機種が多く、洗う部品の数は少なめです。加熱で雑菌が死ぬぶん、衛生面の心配は小さくなります。
超音波式:怠ると健康に関わる
ここだけは性質が違います。
超音波式はタンクの水をそのまま霧にして部屋に出します。加熱も、フィルターでのろ過もしません。タンクの中で雑菌が繁殖していれば、それも一緒に空気中へ出ます。
「手入れをサボると効きが悪くなる」ではなく、「手入れをサボると空気が汚れる」のが超音波式です。毎日の水の入れ替えとタンクの洗浄を続けられるかどうかで、選ぶかどうかを決めてください。
「木造20畳・プレハブ33畳」とは何を意味しているのか
カタログを見ると、適用床面積が2つ書かれています。この2つの数字の意味を知っておくと、選び方が変わります。
2つの数字は、上限と下限を表している
この表記は日本電機工業会の規格(JEM1426)に基づいています。
| 表記 | 意味 |
|---|---|
| プレハブ洋室の畳数 | 対応できる最大の広さ |
| 木造和室の畳数 | 対応できる最小の広さ |
なぜ差が出るかというと、建物の気密性が違うからです。
木造和室は隙間が多く、加湿した空気が外へ逃げやすい。プレハブ洋室は気密性が高いので、同じ加湿量でもより広い部屋をまかなえます。
つまり、自分の家がどちらに近いかで、見るべき数字が変わります。マンションの洋室ならプレハブ側の数字に近く、築年数の経った木造戸建てなら木造側の数字で見たほうが安全です。
加湿量は「室温20℃・湿度30%」で測った値
もうひとつ知っておきたいのが、加湿量の測定条件です。
カタログの加湿量(○○mL/h)は、室温20℃・湿度30%の状態で測った数値です。JEM1426でそう決められています。
ここが実用上のポイントになります。部屋が20℃より寒ければ、加湿量はカタログの数値より落ちます。ダイニチの取扱説明書にも、室温15℃と20℃で加湿量が変わることを示すグラフが載っています。
暖房を入れずに加湿器だけを回しても、思ったほど湿度が上がらないのはこのためです。加湿器は、部屋を暖めてから使うほうが効率が上がります。
部屋の広さより、置き場所のほうが問題になりやすい
畳数だけを見て選ぶと、届いてから困ることがあります。
加湿器には、周囲に空間が必要です。機種によって条件は違いますが、たとえばダイニチのLXシリーズでは次のように指定されています。
- 上に1m以上
- 左右・前後にそれぞれ30cm以上
- 窓際を避ける(直射日光や冷気で湿度センサーが正しく測れない)
- エアコンや暖房の温風が直接あたらない場所
- 加湿された風が家具・壁・カーテンに直接あたらない場所(しみや変形の原因になる)
本体の幅が40cm前後だとすると、左右の余白を含めて1m程度の幅が要ります。棚の下や家具のあいだには置けません。
そして最後の条件が見落とされがちです。湿った風が壁やカーテンに当たり続けると、しみになります。部屋の隅に押し込む置き方はできない、ということです。
タンクの容量は、給水の回数に直結する
もうひとつ、カタログから読み取れることがあります。
タンク容量 ÷ 加湿量 = 連続で運転できる時間です。
たとえばタンク7Lで加湿量1,200mL/hなら、7 ÷ 1.2 で約5.8時間。最大加湿で使えば、1日2回の給水が必要になる計算です。
タンクが大きいほど給水は楽になりますが、満水にすると重くなります。7Lなら水だけで約7kg。洗面所から部屋まで運ぶ距離も考えておいたほうがいいところです。
また、多くのメーカーが「タンクの水は毎日新しい水道水と入れ替える」よう指示しています。継ぎ足しではなく入れ替えです。残った水を足すだけの使い方は、雑菌の繁殖につながります。
水は水道水だけ。浄水器の水も使えない
意外と知られていませんが、加湿器に入れていいのは水道水(飲用)だけです。
次のものは使えないと、メーカーの取扱説明書に明記されています。
- 40℃以上のお湯
- ミネラルウォーター
- アルカリイオン水
- 井戸水
- 浄水器の水
- アロマオイルなどの芳香剤
理由は、水道水は塩素処理されていて雑菌が繁殖しにくいからです。きれいな水のほうがいいだろうと考えて浄水を入れると、かえって雑菌が増えます。
浄水器やウォーターサーバーがある家ほど、間違えやすいところです。
どの方式を選べばいいか
| あなたの状況 | 向いている方式 |
|---|---|
| つけっぱなしにしたい、電気代を抑えたい | 気化式 |
| 寝る前に短時間で湿度を上げたい | ハイブリッド式 |
| 手入れの回数を減らしたい、衛生面が心配 | スチーム式 |
| 小さい部屋、本体を安く済ませたい | 超音波式(毎日の手入れが前提) |
| 小さな子どもがいる | 気化式・ハイブリッド式(スチーム式は蒸気が熱い) |
| 寝室で使う | 静音モードのある機種。方式より運転音で選ぶ |
加湿器を買うべき人・買わなくていい人
方式の話をしてきましたが、そもそも加湿器が要るのかどうかから考えたほうがいい場合もあります。
買ったほうがいい人
- 朝起きたときに喉が痛い。寝ているあいだの乾燥が気になるなら、寝室の加湿を検討する価値があります
- エアコン暖房を毎日つけている。エアコンは水蒸気を出さないので、室温が上がるほど湿度が下がります
- 肌のかさつきや静電気が冬だけひどくなる
- 木造の戸建てに住んでいる。隙間が多く、湿気が逃げやすい構造です
- 家に小さな子どもや高齢の方がいる
なくても困らない人
- 石油ファンヒーターやガスファンヒーターが主暖房。燃焼で水蒸気が出るため、湿度はそれほど下がりません
- 室内で洗濯物を干している。洗濯物の水分が部屋に移るので、加湿器と同じ働きをします
- 湿度計で50%前後を保てている。足りているなら買う必要はありません
- 手入れを続ける自信がない。放置した加湿器は、菌を部屋にまく装置になります
朝の喉の違和感がなくなるかどうか
冬の朝、目が覚めたときに喉がいがらっぽい。飲み込むと少し痛い。日中は何ともないのに、寝て起きたときだけそうなる。
これは風邪ではなく、寝ているあいだに喉の粘膜が乾いているだけということがあります。加湿器がいちばんはっきり効くのが、この場面です。
逆に、日中の乾燥がそれほど気にならず、朝も何ともないなら、無理に買うものではありません。加湿器は置いて終わりではなく、毎日水を入れ替えて定期的に洗う家電です。続けられるかどうかが、方式選びより先に来ます。
実際の機種で比べる
方式が決まったら、具体的な機種で見比べてください。
- 象印の加湿器はどれを選ぶ?(スチーム式)
- パナソニックの加湿機はどれ?(気化式)
- ダイニチ HD-LX1225 のレビュー(ハイブリッド式を寝室で1シーズン使った記録)
よくある質問
結局いちばんおすすめの方式はどれですか
ひとつに絞れません。電気代を最優先なら気化式、手入れの手軽さならスチーム式、その中間がハイブリッド式です。何を我慢できるかで決まります。
ハイブリッド式は結局どっちなのですか
気化式にヒーターを足したものです。温風を使えばスチーム式に近い電気代、使わなければ気化式に近い電気代になります。1台で両方を切り替えられるのが利点です。
超音波式はやめたほうがいいですか
毎日の手入れができるなら問題ありません。ただし水をそのまま霧にする構造なので、タンクを洗わずに使い続けると雑菌も一緒に放出されます。手入れを続ける自信がなければ、ほかの方式のほうが安全です。
加湿器と暖房は同時に使ってもいいですか
むしろ同時のほうが効率が上がります。加湿量は室温20℃を基準に測られているので、部屋が寒いとカタログどおりには加湿できません。ただし、加湿器本体に暖房の温風が直接あたる場所には置かないでください。
部屋干しをするなら加湿器は要りませんか
洗濯物からも水分は出ますが、量も時間も安定しません。加湿が目的なら加湿器、洗濯物を乾かすのが目的なら除湿機と、分けて考えたほうが結果的にうまくいきます。乾かし方は部屋干しの生乾き臭を消すにはにまとめています。
まとめ:方式より先に、続けられるかを考える
加湿器選びで方式を比べるとき、見るべきなのは次の3点です。
- 電気代。ヒーターを使う方式(スチーム式・ハイブリッド式の温風モード)は電気を食います
- お手入れ。気化式とハイブリッド式はフィルター、スチーム式はカルキ汚れ、超音波式はタンクそのもの
- 部屋の条件。畳数は木造とプレハブで意味が違い、置き場所には1m四方の余裕が要ります
そして、いちばん大事なのはここです。加湿器は、置いてスイッチを入れれば終わりという家電ではありません。
毎日水を入れ替え、定期的に洗い、シーズンが終われば乾かして片づける。この手間を引き受けられる方式かどうかが、実際に使い続けられるかを決めます。
電気代の安さだけで気化式を選んでフィルターの手入れを放置すれば、加湿量は落ち、においも出ます。本体の安さで超音波式を選んでタンクを洗わなければ、加湿器が空気を汚す側に回ります。
自分が続けられる手入れの範囲で選ぶ。それがいちばん失敗しない選び方です。
